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タイの原子力発電所問題を扱ったSFX大作

レッド・イーグル / Red Eagle


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 1970年以前に当時の大スター=ミット・チャイバンチャー主演で大人気だったアクション・シリーズもの「インシー・デーン」が、SFX作品として現代に蘇った。インシー・デーンを演じるのは、現在人気絶頂のアナンダー・エバリンハム。日本でもDVD化された「心霊写真(Shutter)」<2004年>、「ミー・マイセルフ 私の彼の秘密(Me...Myself)」<2007年>などでなじみのある人もいるであろう。
 内容的にはものすごく突込みどころのある作品で、巨費を投じたこの作品は実は大コケしてしまっている。2010年度に初公開された作品の中で、年間のベスト50位にも入らないというていたらくぶりだ。もちろん、製作費は回収できていない。ちなみに、国内作品の中では最高のヒットとなった「アンニョン! 君の名は (Hello Stranger)」の1/10にも及ばない興行収入であった。主演にお客を呼ぶことができるアナンダー・エバリンハムを配したにもかかわらずである。
 作品を見ると、その理由はすぐに分かる。作品の完成度の問題は横に置いておくとして、最大の問題は主人公だ。正義のヒーローであるはずのインシー・デーン(「赤い鷲」という意味)だが、あまりにも残酷すぎるのだ。確かに法で守られてしまっている悪人たちを退治する正義の味方なのだが、悪人の殺し方がすごすぎる。ものすごい暴力で相手を痛めつけ、剣で腕や首を切り落とすのだ。しかも落ちた首を足でけり上げる始末。この残酷さは絶対に観客にはうけない。正義のヒーローは、もっとクリーンでなくては。この作品がこけた最大の問題点は明らかだ。
 そして作品自体のできだが、これがまたいただけない。正直言って演出がへたくそで、脚本、メイン・ストーリー共に悲惨な内容となっている。キャラクター設定もよくない。昔とは違うインシー・デーンのキャラクターとしては、戦争で銃撃を受け頭(の真ん中)にその時の銃弾が残っておりときどき激痛に襲われ、モルヒネを注射して痛みを収めている。そして、このインシー・デーンがイマイチ強くない。まあ、昔のインシー・デーンもそれほど強くなかったですが。
 あと、あり得ないストーリー設定が多過ぎるのも難。前述した頭の中央に銃弾が残っていたら当然生きていけないでしょう。それとか、高層ビルでそう簡単にエレベーターより早く駆けおりて待ち伏せするなんてことはできないですよね。ついでに、気絶している人間をバイクの後ろに乗せて走るなんてことも不可能です。また、インシー・デーンと悪の手先である怪物みたいなやつとビルの屋上で長々と決闘するシーンがあるのだが、刑事がその二人を車で追いかけるのです。ということは、二人は車より速く移動しながら戦っているというわけ?ちなみに、設定は二人とも人間です。あり得ませんね。
 そして、この作品はまじめなアクション作品だったはずなのに、後半の一ヵ所だけ突然コメディーに変わってしまう。手に持ったフライパンで敵の銃撃を防ぐなんていうのは、コメディー以外の何物でもありません。調理中の料理を敵に投げつけて銃撃を防ぐシーンには完全に失笑です。
 登場するキャラクターなどは、「スター・ウォーズ」の影響を受けてるというかまねてませんか?なんだか全体的に、この作品のSFX部分には「スター・ウォーズ」のムードが漂っています。ダース・ベイダー見たいのも出てきますしね。
 あと、スポンサーになっている会社の製品が作品中に出てくるというのはタイの映画ではよくあることですが、この作品ではあまりにも露骨です。とてもわざとらしく登場してきます。シンハ・ビールとか、バイクのスズキ、M-150ドリンクなどなど。スズキなんて、わざわざバイクのボディーについているロゴをアップにするんですよ。主人公がM-150ドリンクを自動販売機で買うシーンがあるのですが、シーンが長過ぎです。
 メイン・ストーリーがなかなか進まないので最後はどうやってまとめるのかと思ったら、「To Be Cotinued」の文字が画面に。ウソでしょ。「マハ弐」のときもえっと思ったけど、この作品の方がひどいです。そういえば「スター・ウォーズ」もそうだったけど、でも一応その回の物語は終わってましたよね。
 ミット・チャイバンチャーが主演したこのシリーズは、彼の事故死によって終了しています。遺作である「インシー・トーン(Insee Thong)」<1970年>のラスト・シーンで彼がヘリコプターから下がっているハシゴにぶら下がるシーンがあるのだが、その撮影の際に落下して亡くなってしまいました。今作でもそれを念頭に置いたインシー・デーンがヘリからぶら下がるシーンがポスターなどに使われていますが、本編には登場してきていません。ということは次回作で使うつもりなのでしょうが、大コケしてしまったので続きがありますかどうか。
 監督のウィシット・サーサナティアンは、日本でもDVD化された「怪盗ブラック・タイガー(Tears of the Black Tiger)」<2000年>、「シチズン・ドッグ(Citizen Dog)」<2008年>を撮った人です。これらの作品はストーリーが?でしたが、映像は変わっていて見るべきものがありました。でも、今作はその映像も平凡でしたね。そもそもこの監督をこの作品に起用したこと自体が間違えだと思うのですが。
 エバリンハムの相手役の女優であるヤーリンダー・ブンナークは、東京国際映画祭で上映された「ベスト・オブ・タイムズ(Best of Times)」<2009年>に出ていた人です。知的な美人ですよ。
 ただし、特殊効果に関しては2010年度のスパナホン賞特殊効果賞を受賞しています。ハリウッドから見れば普通のSFXの技術ですが、タイの作品としてはここまですごいSFXを見たのは初めてでこの点は評価できます。タイ映画でもできるんだぞというところを見せてくれましたね。
 これほど悪いネタがそろった作品も珍しいです。これでは、ミット・チャイバンチャーの霊も休まらないでしょうね。
※この作品は、チュムポンに建設している原子力発電所をめぐるストーリーです。

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テーマ : 映画★★★★★レビュー
ジャンル : 映画

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そうだったんですか

映画館で見た時は、そんな出来とは露しらず。後編もそろそろかなと思っていました。大コケですか。アナンダは頑張っていたんですが。確かにスポンサーのシーンは、私も失笑しました。

Re: そうだったんですか

 この作品は、残念ながら最近見た中では一番「かんべんしてくれ~」な映画でした。まあ、ヒットする映画はいい作品で、ヒットしない作品がダメな作品というわけではありませんけど。

なんだか残念ですね・・・

この作品、結構期待していてDVDも買おうかと思っていたのですが・・・。

ストーリー云々はさておき、残酷なシーンはちょっとカンベンです。それと、最近の日本映画がやりまくっている「続く・・・」という手法は大嫌いです。「マッハ」の2と3は事前に知っていたので、心の準備が出来ていましたけど。

ウィシットとシンシーデーンという組み合わせならば、上手くいけば変態的な解釈の作品になった可能性もあったかもしれませんが・・・。

残念です。

Re: なんだか残念ですね・・・

 ぜひ、ためしに見てみてください。できはともかく、ストーリーが何も解決しないうちに作品が終わっていることは確かです。

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asianet

Author:asianet
 初めてタイ映画を見たのは、東京の渋谷で行われたタイ映画祭。そこで「サラシン橋心中」など社会派作品を見てタイ映画もやるもんだと思ったのですが、その次にタイ映画に出会ったのは何年も後のことで国際線の飛行機内でやっていた「マッハ」。これすごいぞと思ったのでずか、そこまででした。そして仕事の関係で「アタックナンバーハーフ」を見なければならなくなり、いつの間にかタイ映画に病みつきに・・・。

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